今は、本当に債務整理に特化し法律事務所や司法書士事務のCMがあまりにも多いですよね。
利用者にしてみたら、どこを選んだらいいものやら…という感じでしょう。具体的な相談例は、直接の面談がなかったとか、取り戻した過払い金の半分を取られたとか、1年以上連絡がないとか…。
やはり、あまりひどいものに関しては、規制を強化せざるを得ないでしょうね。
懲戒含む規制強化検討 債務整理トラブルで日弁連
(2010年8月5日 東京新聞)
借金の整理を勧める広告で広く依頼者を集める一部の弁護士が、報酬や顧客対応の仕方などをめぐり、依頼者との間でトラブルを生じさせている問題で、日本弁護士連合会は懲戒処分も含む規制強化の検討を始めた。依頼者との直接面談や、広告への報酬額の明示を義務付けることなどが柱だ。
(稲田雅文)
「広告がはんらんする現状や不当な報酬を取っているとの批判を率直に受け止めた」。規制強化について日弁連の我妻崇副会長は説明する。
背景には、払いすぎた金利「過払い金」の返還請求の増加がある。かつて消費者金融会社の多くは、顧客に出資法の上限金利(年29・2%)に近い金利で貸していた。
しかし、利息制限法の上限金利(年15~20%)を上回った分は無効とした二〇〇六年の最高裁判決以降、過払い金の返還請求が容易になった。日本貸金業協会によると、〇七年度の債務減額と過払い金額は合計八千五百五億円、〇八年度は一兆百二十三億円に上る。
返還請求をビジネスチャンスとみて、テレビCMなどで宣伝する弁護士や司法書士が増加。それに伴い、依頼者とのトラブルも目立ってきた。
全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会が昨年十一月、弁護士や司法書士による「二次被害」について電話相談を設けたところ、全国から百二十四件が寄せられた。直接の面談がなかったケースは二十七件。「取り戻した過払い金の50%を取られた」といった報酬への苦情や、「毎月六万円を送金しているが、何の連絡もない」「一年以上、連絡がない」といった対応への不満もあった。
同協議会の本多良男事務局長は「一部の弁護士が多重債務者を食い物にしている実態がある」と批判する。
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批判の高まりを受け日弁連は昨年七月、原則として依頼者との直接面談を求める指針を策定。今年三月の指針改正では、面談は「直接かつ個別」に実施するとし、広告は「弁護士費用や直接面談を表示するよう努める」など、より厳格化した。ただ、訓示的な規範で強制力はなかった。
今回の規制強化では、直接の面談や広告の表示について規則に定め、違反した弁護士に懲戒処分ができるようにする。報酬にも何らかの制限を設けたい考えだが、事業者団体に競争を制限する行為を禁じる独占禁止法との兼ね合いで公正取引委員会と調整する必要があり、どのような手法が取れるか検討している。
今後、各都道府県の弁護士会の意見を聞き、執行部案を練る。本年度中に開く臨時総会で承認を得たい考えだ。
規制強化に反発する動きもある。大手法律事務所「MIRAIO」(東京、旧法律事務所ホームロイヤーズ)の代表西田研志弁護士は今年三月、日弁連の指針が弁護士の競争を制限し独占禁止法違反に当たるとして、公取委に排除命令を求めた。措置請求書では、弁護士への直接面談の義務付けは利用者である国民のニーズを無視しており、特に地方の債務者は相談場所を失い、深刻な打撃を受けると主張した。
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司法書士にも規制強化の動きがある。日本司法書士会連合会は昨年十二月、直接の面談を求める指針を策定。さらに、司法書士の報酬についてアンケートをし、全国を八地区に分けて地区の平均額を算出。これをホームページで公開するなど、透明化に努めている。報酬のあり方については日弁連と同様、公取委との調整を進める考えだ。
大阪府や福岡県など都市部の司法書士会では、広告を規制する動きも。愛知県司法書士会は今年五月の総会で、広告に関する規則を設けた。現在、禁止される表現など具体的な運用を定めた指針をまとめている。
和田博恭副会長は「本来、広告の内容は広告主が責任を負うべきだが、司法書士の広告の内容や手法について苦情や問い合わせが多く、規則を設けざるを得なくなった」とする。